『レイディオ』を観ました。

レイディオを観ました。45分でサクッと見れそうなところと、深夜ラジオってワードが決め手になりました。ラジオの民なので。

後半にいくほどネタバレあり。

概ね映画の紹介に書いてあるとおり、ラジオしか趣味のない冴えない男が同じラジオを聞いてる女の子に惹かれていくって話。説明に『彼女に惹かれていくが、（彼女は）自分とは違う世界で生きていることを知る』ってあるからきっと華やかな世界の人気者の女性なのかな？陽キャに惹かれる隠キャかな？って考えてたけど全然違って、ただ価値観が違うだけの女の子でした。環境の違いで世界観とか価値観とか、未来への展望がだいぶ違うっていうか。（男の子は夢もなんにもないから無難に公務員を目指していて、女の子はふわふわしすぎて「将来はタクシーに乗って『おつりはいりません』とかやりたい！」とか言う感じの。）（このあたりは二人のやりとりで顕著になって、関係性が進むにつれて二人の将来への考え方に変化がある……）

内容はゼミの自己紹介でラジオを聞くのが趣味って言った男の子に女の子から声をかけて……って感じ。でも女の子は病気だったんだよね。よくあるやつ！

でもそれを隠して……というには、無理がある。女の子はゼミにこなくなっちゃうんですよ。入院してたから。男の子は女の子に会うために最初はゼミのプリントを渡すって口実が必要だったけれど、数回会ったあたりでプリントとか抜きに会いにきていいかな、って聞くの。「ゼミの友達がラジオの話をしにきたらダメかな」って男の子が勇気をだして言うんだよ！よく言った！

そこから二人は病室でたくさん話をするんだよね。そんで二人で将来のことを考えたりお互いへの理解を深めたりして、女の子は「君は人の気持ちに寄り添える人」って男の子に言う。病気がちで友達がいなくて誰もお見舞いになんてきてくれなかった女の子にとって、男の子の存在はすごい嬉しかったんだよ……

キミが来てくれて本当にうれしい。話を聞いてくれる？　と女の子は昔、深夜に聞いたラジオにどれだけ励まされたかを喋り出す。で、そのメールを送っていた、女の子が好きだった（励みにしていた）リスナーは男の子なんだよね……でも男の子は言わないんだよね……でもそのリスナーに対する女の子のイメージがまんま男の子で……たぶんこの段階でお互いがお互いのラジオネームに気がついてる。だってラジオに送ったメールがその日の出来事なんだ……女の子はふわっとした喩え話で送るんだけど、男の子は直球でかわいい。「はじめて女の子と話した！」とか。二人は現実でたくさん話をして、お互いに出会って嬉しかったことなんかをラジオに投稿する……。

途中で印象的だったシーンは女の子がラジオに『リンダリンダ』をリクエストするところ。BGMがリンダリンダになって、曲が盛り上がるところで男の子が夜の橋を駆け出すの、なんかすごいよかったなぁ。

で、女の子死んじゃう。でも死ぬ直前にラジオにメールを送ってて、MCが男の子に向けての彼女のメッセージを（MCはよくわからんまま）読み上げるんよね……。MCはたぶんわかってないんだよ。男の子にだけ伝わるメッセージなんだよ……。

お見舞いに来てくれた時からなんかじゃなく、ラジオを聞き始めた何年も前から助けられていたこと。病室で触れた優しさであの光がキミだったと確信したこと。そして「キミの大切な人になりたかったけれど、それは私じゃなかった。悔しいなぁ」「こころから幸せを願っています」「たくさんの宝物と後悔をくれてありがとう」「さようなら」と……伝える……。後悔のない生き方をしたいって言ってた女の子が言うんだよ、たくさんのやりたいことがあったけれど、それって充実してたってことなのかな、って。「後悔をくれてありがとう」ってセリフ、なかなかなくない？よくない？？この言葉に出会っただけでこの映画を見てよかった。

で、ラスト。数年後のクリスマス、ラジオ作家になった男の子がリンダリンダをリクエストして、リンダリンダが流れて……エンドロール！おわり！

（女の子が人を笑顔にする仕事がしたいって言ってたんだよね……なんの夢も展望もなかった男の子がラジオ作家になってるの……あまりにも良い……）

ラジオって要素は知らんけど、女子と話したことのない隠キャが女の子に惹かれて、でもその子は病気で、その子が死んじゃって、想いを知って涙する……みたいなのはありがちベッタベタなんだと思うけど（ロマンス系をあまり見ないのでわからない）普通に良い話なので泣きました……。リンダリンダのタイミングと男の子が泣くタイミングがズルいんですよ。

あと私はラジオを聞くタイプの人間なので、ラジオに青春の持て余した感情を委託する男の子が結構刺さりました。現実で、そしてラジオで交差する関係性……よかった……。（お互いが気がついたタイミングとかは明言されてないし、お互いにお互いがお互いであることは言わないのがまた、いい）

見てよかったな〜！45分なのもよい！これ60分以上あったらまた評価変わると思う。あといい意味で華のない映画で、その雰囲気が好きでした。

青春の甘酸っぱさがエモで包まれててよかったのでオススメです。いや、私が恋愛映画に疎いから比較とかはできないんですけど（これって恋愛映画でいいのか自信がないレベル）

こういうのもっと見たいな〜。

あと、男の子のスマホの液晶がバッキバキなの、解像度高くていいなって思いました。指摘する友達なんていないもんね。

ラジオを聞くときも、たとえ家の中でもイヤホンをするところとかが世界との断絶感あってよかった。テレビとかは垂れ流しにしとくあたり、ラジオにはマジなんだなーって